『三四郎』 (さんしろう) |
夏目漱石(なつめそうせき) 918.6/N57/15 |
| 「迷える子(ストレイ・シープ)」と美禰子が口の内で言った。三四郎はその呼吸(いき)を感ずることができた。 | |
『最後の一句』 (さいごのいっく) |
森 鴎外(もりおうがい) 080/Sh61/1791 |
| いちは……少し間を置いて、何か心に浮かんだらしく、「お上の事には間違いはございますまいから」と言い足した。 | |
『夜明け前』 (よあけまえ) |
島崎藤村(しまざきとうそん) 080/I95/1-4/2-5 |
| 木曽路はすべて山の中である。……一筋の街道はこの深い森林地帯を貫いていた。 | |
『すみだ川』 (すみだがわ) |
永井荷風(ながい かふう) 080/I95/31-042-2 |
| 長吉は一度別れたお糸とは異なる境遇から、その心までが遠ざかり、幼なじみもついにはあかの他人に等しいものになるだろう。 | |
| 『銀河鉄道の夜』 (ぎんがてつどうのよる) | 宮沢賢治(みやざわけんじ) 080/Sy9/集15 |
| 「僕はもうあんな大きな闇の中だってこわくない。きっとみんなのほんとうのさいわいをさがしに行く。どこまでもどこまでも僕たち一緒に遊んで行こう」 | |
| 『檸 檬』 (れもん) |
梶井基次郎(かじい もとじろう) 080/Sh61/122 |
| その檸檬の色彩はガチャガチャした色の階調をひっそりと紡錘形の身体の中へ吸収してしまって、カーンとさえかかっていた。 | |
| 『薮の中』 (やぶのなか) |
芥川龍之介(あくたがりゅうのすけ) 918.6/A39/28 |
| 自分の妻になる気はないか?……盗人にこう言われると、妻はうっとりと顔を擡(もた)げた。おれはまだあの時程、美しい妻は見た事がない。 | |
| 『生まれいづる悩み』 (うまれいづるなやみ) |
有島武郎(ありしまたけお) 918.68/A76/25 |
| ほんとうに地球は生きている。生きて呼吸している。この地球の生まんとする悩み、この地球の胸の中に隠れて生まれ出ようとするものの悩み――それを僕はしみじみと君によって感ずる事ができる。それはわきいでけり上がる強い力の感じをもって僕を涙ぐませる。 | |
| 『出家とその弟子』 (しゅっけとそのでし) |
倉田百三(くらたひゃくぞう) 080/Sh61/81 |
| この世では罪をつくらずに恋をすることはできないのだ。だれも一生に一度は恋をするものだ。人間の一生の旅の途中にある関所のようなものだよ。その関所を越えると新しい光景が目の前に展(ひらけ)るのだよ。 | |
| 『刺 青』 (しせい) | 谷崎潤一郎(たにざきじゅんいちろう) 918.6/Ta/87 |
| 重く引き入れては、重く引き出す片息に、蜘蛛の肢は生けるがごとく蠕動した。 「苦しかろう。身体を蜘蛛がだきしめているのだから」 | |
| 『銀の匙』 (ぎんのさじ) |
中勘助(なかかんすけ) 080/Ka92/7496 |
| あの静かなこどもの日の遊びを心からなつかしくおもう。 | |
| 『田園の憂鬱』 (でんえんのゆううつ) |
佐藤春夫(さとうはるお) 918.6/Sa85/32 |
| 「おお、薔薇(そうび)、汝病めり!」 その声は一体どこから来るのだろう。 | |
『青銅の基督』 (せいどうのきりすと) |
長与善郎(ながよよしろう) 918.6/Mi36/87 |
| 「長老と、モニカとの結合體が髪髴と現はれた。その結合體が星座の第十字の中に燦然として見えた時、彼はその前にひれ伏したが、次の瞬間彼は「オオ!」と叫んで飛び上がった。……「オヽ、今こそ、俺はあの聖像を造らう!……」 | |
『路傍の石』 (ろぼうのいし) |
山本有三(やまもとゆうぞう) 918.6/Y31/27 |
| 「吾一というのはね、われひとりなり、われはこの世にひとりしかないという意味だ。世界になん億の人間がいるかもしれないが、おまえというものはいいかい……世界中にたったひとりしかいないのだ」 | |
| 『天の夕顔』 (てんのゆうがお) |
中川与一(なかがわよいち) 080/Sh61/660 |
| 「僕はいつまでもあなたを待ちましょう。あなたの心が自由になれるまで、僕はあなたが六十になられるまで待ちましょう」 | |
| 『古 都』 ( こ と ) |
川端康成(かわばたやすなり) 080/Sh61/1833 |
| 「室町のくらしなんか、あたしには、でけやしまへん。たった一度、たった一度だけ、お店にこさしてもろたんどす」 | |
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『夫婦善哉』 (めおとぜんざい) |
織田作之助(おださくのすけ) 918.6/O17/72 |
| 「一人よりも夫婦の方が良えいうことでっしゃろ」ぽんと襟を突き上げると肩が大きく揺れた。 | |
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『麦と兵隊』 (むぎとへいたい) |
火野葦平(ひのあしへい) 918.6/H61/67 |
| 私は目を反した。私は悪魔になってはいなかった。私はそれを知り、深く安堵した。 | |
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『人間失格』 (にんげんしっかく) |
太宰 治(だざいおさむ) 080/Sh61/443 918.6/D49/70 |
| 恥の多い生涯を送って来ました。 | |
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『ジョン万次郎漂流記』 (じょんまんじろうひょうりゅうき) |
井伏鱒二(いぶせますじ) 918.6/I12/41 |
| 五人のものは大きな声で助けを求め、手をひろげ髪の毛をかきむしって「助けてくれえ、助けてくれい」と喚(わめ)きたてた。しかし船は矢のように押し流された。やがて地方も室戸岬も波のかげに見失ってしまった。 | |
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『蒼 氓』 (そうぼう) |
石川達三(いしかわたつぞう) 918.6/I76/64 |
| 五、六歩行って、ふと立ち止まる。この葦の下はデッキではない、ブラジルの土である。(あヽ日本よ!)思わずも船を見かえる。この船を離れることが即ちも日本を離れるのだと思われて…… | |
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『天平の甍』 (てんぴょうのいらか) |
井上 靖(いのうえやすし) 080/Sh61/1613 918.6/I57/83 |
| 私の写したあの経典は日本の土を踏むと、自分で歩き出しますよ。私を捨ててどんどん歩いて行きますよ。 | |
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『潮 騒』 (しおさい) |
三島由紀夫(みしまゆきお) 918.6/Mi54/82 |
| 「その火を飛び越して来い。その火を飛び越してきたら」少女は息せいてはいるが、清らかな弾んだ声で言った。裸の若者は躊躇しなかった。つま先に弾みをつけて、彼の炎に映えた体は、火のなかへまっしぐらに飛び込んだ。 | |
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『秀吉と利休』 (ひでよしとりきゅう) |
野上弥生子(のがみやえこ) 913.6/N93/13 |
| 「まことを申せば、人ひとりの御機嫌がとやこうと、それのみを気にして暮らすのには、私もちと草臥(くたび)れました。。 | |
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『華岡青洲の妻』 (はなおかせいしゅうのつま) |
有吉佐和子(ありよしさわこ) 080/Sh61/1917 |
| 「姑に逆らいなさるのかし」 「事と次第では逆ろうても女の道に外れるとは思いませんのよし」 言葉の中に針を隠しながら、於継(おつぎ)も加恵も酔ったように陶然として争い続けた。 |
注1 「目次」の内容は、『あらすじで読む日本の名著2』(小川義男編 楽書館発行)より
ここの目次にある各図書(原書)は、本学図書館にそろえてあります。
注2 青字は、請求記号(本学図書館で原書を捜すときに参照してください)